うま味を付けるための添加物(いわゆる化学調味料)として認可されているものはたくさんあります。
アミノ酸系のうま味を付ける・グルタミン酸ナトリウム・グルタミン酸カルシウム・・・etc
核酸系のうま味を付ける・グアニル酸ナトリウム・イノシン酸ナトリウム・・・etc
などがあり、実際の原材料表示としては『調味料(アミノ酸等)』という形でよく目にすることになります。
(他の表示もありますが、表示頻度が少ないことと、説明が複雑になるので、ここでは割愛します)
添加物の方ばかりに意識が向きがちですが、食品扱いの原材料でも気をつけた方が良いものがあります。
食品扱いの原材料にも添加物と同じように工業的に抽出・製造されたうま味をつけるものが様々な加工食品に多用されています。
よく見かけるのが・たんぱく加水分解物・アミノ酸液・酵母エキス。
これらは、化学調味料に類する物と思っていただいた方が良いものです。
なぜ、これらは食品扱いで前者は添加物扱いなのか?
法律上、明確な線引きの規定がないため、私たちはその経緯や判断理由を知る由もないのですが、添加物扱いかそうでないかの論争よりも気をつけるべき3つのポイントがあります。
1、強すぎる味による弊害
うま味調味料は自然由来のものからできているので安心です。と謳っている業界もありますが、自然由来とは
いえ、手作りで自然の食材から摂る時と明確に異なる点があります。
それは味が濃すぎるということ。自然の素材を生かした料理ではありえない強すぎるうま味。
一流割烹の料理長たちはその強すぎる味が、素材と料理全体の味を壊すとして嫌っています。
強い味であるため、製造技術や調理スキルが低い人でもバシッと味が決まる!として加工食品や便利調味料では多用されていますが、この強すぎる味は、人間の持つ本来の味覚を損ねてしまいます。
濃い味に慣れると、素材本来の味、薄味がわからなくなり、“作られた強い味”じゃないと物足りなくなる。
そして、濃い味の加工食品をたくさん食べると、添加物以外にも塩分・糖分・油分といったものを結果的に取り過ぎることになります。
最終的には、高血圧、糖尿病や生活習慣病といった眼に見える形での健康影響が出てしまいます。
化学調味料も、食品扱いのアミノ酸液、タンパク加水分解物、酵母エキスも結局は同じ、“作られた強すぎる味“なのです。
2、製造工程上の懸念残留物質は?
物によって懸念事項が違うため、ここでは、一つだけピックアップして解説します。
『たんぱく加水分解物』これは文字通り、タンパク質を分解して得られた物です。
タンパク質を含んでいればなんでも原料になり得ます。
かつては髪の毛でも、鳥の羽でも使われていたようです。
ですが、えぐみが強過ぎたり、風味が悪過ぎたりといった理由で、現在ではほぼ流通していないようです。
現状流通している『たんぱく加水分解物』は肉の切れ端などのクズ肉の原料としていることが多いようです。
懸念は原料に何が使われているのか不透明であることに加え、製造工程で、原料が劇薬の塩酸で分解されることです。
この工程で使用された塩酸はほぼ残留しない、残留したとしても無視できる程度だとして、添加物のように使用量や使用方法など厳しく規制されていませんが、果たして、市場流通品の全てが残留の問題が全く無いのか?心配なところがあります。
塩酸の残留問題がなかったとしても、その他にも懸念があります。
それはクロロプロパノール類。
日本では基準値がありませんが発がん性の懸念がある物質で、EU等の海外では、基準値が設定されています。
これは、主に塩酸分解する際に、原料中の脂質と塩酸が反応して生じ、意図せずにできてしまう副産物です。
伝統製法の醤油は本来、『大豆・小麦・塩』のみで作られますが、安価な醤油には、使われている大豆の量が少なく、うま味が足りないためアミノ酸液やタンパク加水分解物が加えられます。
この安価な醤油は海外にも輸出されておりかつて、イギリス国内での流通調査で基準値を超過し、警告を受けた経緯があります。
日本では健康への大きな懸念が生じるほどの高濃度の商品がほとんど見つかっていないことから「基準値を設定する必要はない」と判断されていますが、最近の調査結果でも検出されている状況です。
『アミノ酸液』もたんぱく加水分解物に似ているもので、この懸念も同等程度ではないかと思います。
3、物質そのものによる懸念
グルタミン酸系の物質は神経伝達物質の一種です。グルタミン酸自体は自然界にも存在しており、人間にとって必要なものですが、摂り過ぎた場合、悪影響が懸念されています。
動物実験ベースではありますが、“摂取過剰は攻撃性を増す“と学術研究に基づいた研究成果が発表されています。(国立遺伝子研究所(三島市)と筑波大のグループが2015年に発表)
化学調味料を多く摂りすぎると精神状態に影響する可能性がこの研究結果により示唆されたといっても誤りではないかと思います。
※人間レベルでは、ケーススタディの域を出ない状況であるため、業界団体は否定しています。
また、それ以外にも海外でグルタミン酸ナトリウムが問題視された事例があります。
1960~70年代のアメリカで『中華料理症候群』が話題となり、大きな論争を呼びました。
これは、中華料理を食べた後に生じる顔面の圧迫感、胸痛、全身の灼熱感、不安などの症候群のことで、当時、グルタミン酸ナトリウムに対する過敏反応が原因と考えられ、問題視されていました。
その後の研究により、グルタミン酸ナトリウムが直接的な原因として断定できない、と否定されました。
ですが、その一方で完全に否定することもできないという見識も出ています。
この賛否両論の論争は現在でも続いており、アメリカ国内の消費者意識の実状としては、MSG(グルタミン酸ナトリウムの英語略称)に対するネガティブなイメージは強く、避けたい人が多いという意識調査結果があるほどです。
アメリカ国内ではMSGを使用していない『No MSG』と大きく記載されているカップ麺の方が人気のようです。(日本ではそのような商品はありません)
うま味系調味料はほとんどの加工食品に使用されているほど頻出のものです。
商品を手に取って、うま味系調味料がどれだけたくさん使われているか、あなた自身の目で確認してみてください。
どんなに知識や意識を高めても原材料を見なければ、避けようも、選びようもありません。
まずは、よく食べる商品が何でできているのか確認することろから始めてみてください。
そして、嫌だと感じる原材料が使われているものは少しずつ食べる頻度を下げる。それが、無理のない食の変え方です。
「加工食品診断士」 養成講座 講師 原田浩秀先生より