腸は単に消化・吸収・排泄のはたらきをするだけではありません。
欲望を生みだしたり、快・不快を生みだすといったように、脳で複雑に考える以前の「生きるための情動」を生みだす源になっています。
腸で起こる「情動」とは、生きていくための「根源的情動」で、生命あるものはすべてこの生きるための本能ともいえる情動を持っています。
どんな生物でも、その最大のテーマは「いかに生きのびるか」ということです。
環境に適応し危険を避けて、自分の命を少しでも生きながらえさせようと努める。
しかし、多くの人は多かれ少なかれ腸が病んでいます。
食べ物からもたらされる腸内環境の汚染は、単に病氣の原因をつくるだけではなく、いきいきとした心までを蝕んで、精神的な問題まで引き起こしています。
その代表が過敏性腸症候群とうつ病です。
日本を含む先進国で10~20%ほどの人がこの症状の病気で、主に大腸の運動や分泌機能の異常で起こる病氣の総称です。
検査を行っても炎症や潰瘍など目に見える異常が認められないにもかかわらず、下痢や便秘、ガス過多による下腹部の張りなどの症状が起こります。
うつ病になる人は、慢性的なストレスを感じていることが多いので、自律神経に影響を与えて、交感神経の活動が高まっています。
そしてそれは腸の運動を低下させます。
すると便が滞留して、ガスの放出が困難になり、腹部膨満感が出て食欲が低下していき、ますます便秘がひどくなるのです。
そして、逆もまた然りで、便秘が原因で、うつ病になることもあるわけです。
うつに関わる脳の神経伝達物質としてセロトニンがあります。(幸せホルモン)
セロトニンは心を安定させる作用があり、これが少なくなるとうつ病を引き起こすことがわかっています。
人体で生産されるセロトニンの95%は腸でつくられ、脳では1%しか生産されません。
(残りは腎臓や血小板などで生産されています。)
このような例でも、腸内環境を善玉菌が圧倒的に優勢な環境の状態に維持することが、腸の働きに大事なことがお分かりだと思います。
氣が付けば健康、振り返れば幸せ。